雨を待つあやめは美し

あなたの世界がたくましくなりますように。

加藤シゲアキの今と昔と世界

いつか、いつか加藤シゲアキがまだ加藤成亮だった頃。

その頃の彼が、私には少しばかり臆病だったように見える。

 

元々から彼は自己肯定感が低い人間だと思う。それは今も同じだと思うが、6人、ましてや8人だった頃は特にだった。

口に出しているわけではないが、「俺なんかが、」というオーラがちらちらと見え隠れしているようで私はそれをみると辛くなる時がある。笑顔なんだけど、引きつっている笑顔のようで、少し苦しそうに見える。

 

その彼がエッセイを連載している“TRIPPER”で「自分に刃を向ける人を抱きしめられる大人でありたい」と言っていたのがとても印象深かった。

いつかの広い体育館で1人泣いていたあの少年が

Jr.時代エリートだと思ってやってきたけどグループに入ってから沢山挫折したあの少年が

いつかのコンサートで「俺のうちわ持ってる人は愛情じゃない。同情だから。」と言っていたあの少年が

十数年でとても強い人間になっていて

とても優しい人間になっていて

自己肯定感が前よりもいい意味で強くなっていて

とても大人になっていた。

 

そんな今だからこそ、“世界”を生み出せたのかな、と思う。

 

“世界”の最初はアカペラから始まる。

そもそもアカペラというのは音楽において難しいものであってそこから始めようとした加藤シゲアキはすごいと思った。

アカペラは歌うのが難しい訳じゃない。歌うことくらい誰でもできる。ただ、“アカペラで歌っている数秒間で歌を飽きさせないようにすること”が難しい。だから私はアカペラは歌が上手い人でなければ出来ないと思う。

そのアカペラを入れてきたってことは加藤シゲアキが歌が上手くなったこと、そして彼自身が歌に自信を持ててきたことの現れだと思う。

それに、ここ最近のしげのソロって段々音が少なくなってきてるんです。音というか、パーカッションというか、BGMというか。なんて言うのかよくわからないけど(笑)。音が多ければ多いほど歌が隠れるので誤魔化すことが出来る。それをせず少ない音で勝負をするところも上手くなった印かなと思います。

 

歌詞を聴いて1番最初に思い浮かんだのが“加藤成亮”。私は加藤シゲアキの中の“加藤成亮”、あるいは加藤シゲアキが昔の“加藤成亮”に向かって歌っているように聞こえた。

手に入れたかった、自分の中では手に入れるはずだった景色は見えない。自分の存在すらあってもいいものなのかと疑いながら毎日過ごす。

でもそれでもいいんじゃない?って。生きてみなよ、って語りかけているような曲だと思いました。

そして、いつか誰かを助けるような曲になるんじゃないかなって。

 

それが、これが

加藤シゲアキの世界だって。